腸内環境が健康を左右する!「腸内フローラ」とは?

「腸内フローラ」という言葉をご存知ですか?

腸の中には、およそ100兆個もの細菌が常在していると言われています。これを、「腸内細菌」といい、腸の中で複雑な生態系を築いています。この腸内細菌の群集を、「腸内フローラ」というのです。フローラ(flora)は「特定の限られた地域に生育・分布する植物全種」という意味で、かつての分類学では菌類も植物と分類されていたので、こう呼ばれています。最近最新の研究では、一人当たりの腸内細菌の種類は、少なくとも500種?2000種だとわかっており、その構成は個人差が大きく、文化や遺伝、食生活によって様々です。

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腸内細菌は、普段目にする事も多い乳酸菌やビフィズス菌といった「有用菌(善玉菌)」、ブドウ球菌や有毒株の大腸菌などの「有害菌(悪玉菌)」、バクテロイデスや無毒株の大腸菌といった「日和見菌」の3種類に分類することができます。

有用菌は、腸内細菌のうち20?30%を占め、ビタミンを合成したり、消化・吸収を助けたり、外来菌の感染防御や宿主の免疫機能を刺激することで、健康維持の役に立っています。

有害菌も20?30%で、毒素を発生させたり、腐敗物質を生んでガスや悪臭のもととなる物質作り出したり、発がん性物質を生産したりして、癌や高血圧といった病気、アレルギー、各種腸疾患などを引き起こす原因となっています。また、日和菌は40?60%の割合で存在し、有用菌が優勢ならば良い働きをして、有害菌が優勢なら悪い働きをする腸内細菌です。

このように、腸内フローラが私たちの健康に大きく関わっています。腸内フローラは、加齢や環境の変化などでその構成が変わってしまいますが、健康を維持するためには、有用菌を優勢に、有害菌を劣勢に保つ事が重要です。


人が食べた食べ物は、胃で消化された後、小腸で吸収されます。消化・吸収されずに大腸まで運ばれた物を、腸内細菌たちが食べ、排泄します。その排泄物を別の腸内細菌が食べ、排泄し、またその排泄物を別の腸内細菌が食べ・・・というようにして、どんどん小さな物質になっていきます。この腸内細菌の排泄物が、私たちの身体に吸収され、大きな影響を与えているということがわかってきました。

そして注目されるようになったのが、「短鎖脂肪酸」です。短鎖脂肪酸とは、油脂を構成する脂肪酸のうち、炭素の数が6個以下の物のことで、腸内細菌が食物繊維やオリゴ糖を発酵することで生成されます。この短鎖脂肪酸が、「肥満防止」「しわの軽減」「アレルギー反応の抑制」など人体に良い影響を及ぼすということがわかったのです。

短鎖脂肪酸を作り出す腸内細菌のひとつがバクテロイデスです。肥満の人は、バクテロイデスなどの腸内細菌が少ない事がわかりました。無菌状態で育てたマウスに、肥満の人の腸内細菌を移植するとそのマウスは太り、痩せた人の腸内細菌を移植すると痩せるという実験結果も出ています。

では、腸内にそういった有用な細菌がいない、若しくは少ない場合は、どうしたら良いのでしょうか。

1つは乳製品や発酵食品(味噌、ぬか漬けなど)を食べ、有用菌を増やす方法です。しかし、消化液などの酸によって死滅してしまうものが多く、生きたまま腸まで到達するのは困難です。さらに定着することがほとんどないため、継続的に取り入れる必要があります。

また、腸内細菌や腸内細菌が生産する成分を直に摂取するという方法もあります。現在「腸にまで届く乳酸菌」や「発酵エキス」などさまざまな物が売られています。

短鎖脂肪酸や、腸内細菌が生成するその他の有用な成分自体を摂取して、身体に吸収させることで、同じ効果を得る事が期待できるのです。

私達の体内では、今も数多くの細菌たちが勢力争いをしています。

元気で健やかな生活は、腸内細菌のおかげで成立していると言っても過言ではありません。悪玉菌を増やさず、善玉菌が増えるようなバランスの良い食事や生活習慣を心がけたいものですね。